近年、健康志向の高まりとともに「ホットヨガ」は急速に人気を集めています。
大手スタジオのSNS広告を目にしたことがある方も多いでしょう。
特に女性を中心に、美容・リラクゼーション・デトックスといった効果を期待して始める人が後を絶ちません。
一方で、インターネットの口コミや体験談を見てみると、ポジティブな意見だけでなく、

「レッスン中に気分が悪くなった」「めまいで途中退室した」「脱水になりかけた」
といった声も散見されます。
こうした背景から、「ホットヨガを続けても大丈夫なのか」「やめたほうがいい人はどんな人か」という不安や疑問を持つ方は少なくありません。
特に、運動経験が少ない人や持病を抱えている人にとっては、ホットヨガの環境が思わぬリスクにつながる可能性もあるのです。
そこで、本記事では、ホットヨガのデメリットやリスク、やってはいけない人の条件などについて紹介します。
「自分はホットヨガをやっても良いのか否か」についての判断材料にしていただければと思います。
ホットヨガの特徴は環境にあり

ホットヨガのプログラムは、一般的な常温のヨガと大きく変わるわけではありません。
基本の流れは、以下の通りで、普通のヨガとほとんど相違ないことがわかります。
- 深い呼吸法で心身を落ち着ける
- 軽いポーズ等で身体を温める
- 立位・座位・寝姿勢など多様なヨガポーズをとる
- 最後にリラクゼーションで締める
一方で、一般的なヨガと大きく異なるのが、その「環境」です。概ね、下記のような環境で、ヨガを実施するということになります。
- 温度:38〜40℃前後
人の体温より少し高めの室温に保たれることで、筋肉や関節が温まりやすく、柔軟性が増すといわれます。 - 湿度:55〜65%程度
サウナのような極端な蒸し暑さではなく、あくまで運動が可能な範囲に調整されています。これにより、大量の汗をかきやすくなります。

温度を38℃、湿度を65%の環境で、ホットヨガを実施するスタジオが多いです。
このような環境は、インドの気候を意識していると言われることもあります。
しかし、実際には「発汗を促進するため」に人工的につくられたものであると解釈するのが正しいです。
高温環境であるため、「発汗量が多い」「心拍数が上がりやすい」といった傾向があります。
そのため、常温ヨガと比べると有酸素運動的な側面が強まり、ダイエットやデトックス効果を期待する人が多いのです。
そうしたもあり、ホットヨガは、現在も、人気となっています。
関連記事「【痩せない?】ヨガで痩せること・ダイエットはできる?理由も含めて解説します」(内部リンク)
ただし、「人気がある=万人に安全」ではありません。
高温環境は確かに魅力もありますが、リスクを正しく理解せずに始めると、体調不良や危険につながることもあります。
そのリスクについて、続いて、述べていきます。
ホットヨガのデメリットとリスク

ヨガを行う環境こそが、ホットヨガのデメリット・リスクになります。
熱中症予防の指針として、暑さ指数があります。
暑さ指数(WBGT(湿球黒球温度):Wet Bulb Globe Temperature)は、熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標です。 単位は気温と同じ摂氏度(℃)で示されますが、その値は気温とは異なります。 暑さ指数(WBGT)は人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響の大きい ①湿度、 ②日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、 ③気温の3つを取り入れた指標です。
環境省 熱中症予防情報サイトより引用
ホットヨガを行う環境において、暑さ指数は、基本的に、31℃を上回ります。
日本スポーツ協会が定めている「熱中症予防運動指針」によりますと、暑さ指数が31℃以上の場合、「運動は原則中止」すべきとしています。
そうした環境下において、ヨガが実施されるわけですから、デメリット・リスクがないはずがありません。
過去に、国民生活センターが、ホットヨガによる体調不良やけがに注意するように呼びかけたこともありました。
ここからは、ホットヨガのデメリットとリスクについて、以下の通り、見ていきましょう。
- 脱水症状のリスクがある
- 心臓や循環器への負担が大きい
- けがのリスクが高まる
- 自律神経が乱れる
- 肌トラブルの可能性がある
- 体力面・費用面でハードルが高い
それぞれ、詳細に見ていきます。
脱水症状のリスクがある
ホットヨガは大量に汗をかくため、体内の水分や電解質(ナトリウム・カリウム)が急速に失われることがあります。
これを補給しないまま続けると、脱水症状や熱中症を引き起こす可能性があります。
特に、以下のようなサインには要注意です。
- めまい、立ちくらみ
- 頭痛
- 吐き気
- 集中力低下
水分補給や塩分補給を怠ると危険なため、必ず「レッスン前後の水分補給」「ポーズの合間での小まめな水分摂取」が欠かせません。

特に初心者や体力に自信のない人は、発汗量に見合った水分・電解質補給が必須です。
心臓や循環器への負担
高温環境での運動は、心拍数や血圧に影響を与えます。確かに、健康な人にとっては「適度な負荷」となることもあります。
しかしながら、以下のような症状を抱えている人にとっては、過度な負担となり得ます。
- 高血圧
- 心疾患
- 不整脈
- 動脈硬化 など
ホットヨガは心拍数や血圧が上がりやすく、持病のある人は注意が必要です。
持病のある方は、主治医に、ホットヨガの実施について確認するようにしてください。
けがのリスクが高まる
温かい環境で筋肉が柔らかくなるのはメリットですが、反面「自分の限界以上に伸ばしてしまう」こともあります。
これにより、
- 筋肉や腱の損傷
- 関節のオーバーストレッチ
といったけがにつながるケースがあります。特に、初心者は「ポーズを深めすぎない」「無理をしない」ことが重要です。
自律神経が乱れる
ヨガのポーズは、自律神経のバランスを整えてくれます。それは、ホットヨガにおいても、同様です。
しかし、問題は、ホットヨガ終了後です。
ホットヨガの終了後、暑い空間から涼しい空間・寒い空間へと移動し、急激な温度変化にさらされた場合、自律神経が過剰に反応することがあります。
自律神経が乱れると、めまいや頭痛が起こることがあります。
レッスン終了後は、体をできるだけ冷やさないことが大切です。
肌トラブルの可能性がある
ホットヨガは、「美肌効果がある」と言われる一方で、
- 汗によるかゆみ
- アトピーや敏感肌の悪化
- ニキビの増加
といった肌トラブルが起きる場合もあります。
清潔にしていないヨガマットやタオルの使用も肌荒れの原因になりやすいため、衛生管理も重要です。

基本的に、ヨガスタジオは、清潔に保たれていることが多いですが、自宅でホットヨガをするときなどは注意しましょう。
体力面・費用面でハードルが高い
常温ヨガに比べると負荷が高いため、体力に自信がない人や運動習慣がない人にとってはハードルが高いです。
特に、最初の数回は「息苦しい」「きつすぎる」と感じることもある可能性があります。
※ただ、その割には、思いのほか、消費カロリーが少ないのが、ホットヨガの特徴でもあります。
また、ホットヨガは常温ヨガよりもスタジオの設備維持にコストがかかるため、月額料金や都度料金が高めに設定されています。
一般的には月額8,000~15,000円程度が相場で、長く続けるには金銭的な負担も考える必要があります。
ホットヨガをやめたほうがいい人・向いていない人

ホットヨガは美容や健康に良い効果をもたらす一方で、以上にように、いくつかのデメリットやリスクもあります。
したがって、「全ての人に向いている運動」ではありません。
体質や生活習慣、既往歴によっては、かえって体に悪影響を及ぼすケースもあります。
ここでは、先述したリスクやデメリットにも鑑みて、下記の通り、ホットヨガをやめた方がいい人・向いていない人について詳しく解説します。
- 心疾患や高血圧を抱えている人
- 妊娠中の人
- 貧血・低血圧の人
- 体力に自信がない人・運動習慣がない人
- 肌が弱い、アトピーや敏感肌の人
- 金銭的に負担が大きいと感じる人・継続が苦手な人
それでは、見ていきます。
心疾患や高血圧を抱えている人
高温多湿の環境で体を動かすと、心拍数や血圧が大きく変動します。
健康な人には軽い負荷であったとしても、以下のような疾患を持つ人には危険なリスクとなります。
- 狭心症
- 心筋梗塞の既往歴
- 高血圧症
- 不整脈
心臓や血圧に関する持病がある場合、医師に相談することが必須です。
妊娠中の人
妊娠中はホルモンバランスが変化し、体温調節機能も不安定になります。
ホットヨガの高温環境は母体にも胎児にも負担となるため、基本的に推奨されません。
といいますのも、脱水症状等に加えて、子宮収縮や胎児への酸素供給不足のリスクもあるからです。
妊娠が分かった時点でホットヨガは控えるようにしましょう。

妊娠中は「マタニティヨガ」を実践することをおすすめします。
貧血・低血圧の人
ホットヨガでは汗を大量にかき、血管が拡張することで血圧が下がりやすくなります。
そのため、もともと低血圧や貧血体質の人は、
- めまい
- 立ちくらみ
- 倒れる
といったリスクが高まります。
スタジオでも、実際に、途中退室する人は、このタイプに当てはまることが多くあります。
体力に自信がない人・運動習慣がない人
ホットヨガは通常のヨガよりも消耗が激しいため、基礎体力が不足している人にとっては大きな負担です。
レッスン中に「息苦しい」「頭がぼーっとする」と感じやすく、継続するのが難しい場合もあります。
まずは常温ヨガやストレッチから始め、体を慣らすことをおすすめします。
肌が弱い、アトピーや敏感肌の人
ホットヨガの大量の汗は、皮膚に刺激を与えることがあります。
特に、アトピー性皮膚炎や敏感肌の人は、かゆみや炎症が悪化するリスクがあります。
また、スタジオのマットや床が十分に清掃されていない場合、雑菌によって肌荒れを起こすこともあります。
金銭的に負担が大きいと感じる人・継続が苦手な人
ホットヨガは一般的に月額料金が高めです。
無理をして続けると、ストレスや生活費の圧迫につながります。「費用対効果が自分に合うか」を冷静に判断することが大切です。
一方で、効果を実感するには最低でも2~3ヶ月の継続が必要です(週1~2回実施の場合)。
三日坊主になりやすい人や、忙しくてスケジュールが安定しない人にとっては、効果を感じられるまで、時間がかかる場合があります。
ホットヨガのメリットももちろんある

当記事では、ホットヨガのネガティブな側面を中心に述べてきました、もちろん、ホットヨガのメリットもあります(下記の通りです)。
- 発汗によるデトックスが期待できる
- 柔軟性が向上する
- 代謝アップ効果が期待できる
- 血流改善・冷え性対策になる
- 精神的リラックス効果が期待できる
- 美肌効果が期待できる
こちらは、以下、簡単に、述べていきます。
発汗によるデトックスが期待できる
ホットヨガ最大の特徴は、通常の運動以上に大量の汗をかくことです。
発汗によって体内の老廃物が直接排出されることがイメージされますが、実際は、体温調節のために汗腺が活性化するということになります。
そのため、結果的に「スッキリ感」や「むくみ解消」を感じやすくなると考えられます。
特に冷え性や水分代謝の悪さに悩む人にとっては、大きなメリットになります。
柔軟性が向上する
高温環境により筋肉や関節が温まり、身体が動かしやすくなります。
そのため、常温ヨガでは難しい深いストレッチやポーズが取りやすくなり、可動域が広がる効果が期待できます。
これによりケガの予防や姿勢改善につながる点もメリットです。
代謝アップ効果が期待できる
ホットヨガは心拍数が上がりやすく、常温ヨガに比べると「軽い有酸素運動」に近い効果をもたらします。
そのため、常温ヨガよりも、
- 代謝の促進
- 脂肪燃焼のサポート
といった効果も期待できます。
特に、継続的に取り組むことで、「体脂肪率の低下」「基礎代謝の向上」といった変化が実感される場合があります。
血流改善・冷え性対策になる
室温が高いため血管が拡張し、全身の血流が促進されます。
これにより冷え性の改善や肩こり・腰痛の軽減が期待できます。
また、発汗と循環改善によって体内の水分代謝も活性化し、むくみの解消につながるケースも多いとされています。
精神的リラックス効果がある
ヨガそのものが「呼吸」「瞑想」「集中」によるリラックス効果を持っています。
加えて、ホットヨガでは発汗による爽快感やレッスン後の達成感も相まって、ストレス解消や気分転換の効果が高まりやすいといえます。
特に仕事や勉強でストレスを抱える現代人にとっては魅力的なメリットです。
美肌効果が期待できる
大量の発汗により毛穴の汚れが排出されやすく、血行促進と相まって肌のターンオーバーを整える効果が期待できます。
もちろん個人差はありますが、「ホットヨガを始めてから肌の調子が良くなった」と感じる人もいます。
ここで、注意したいのが、ホットヨガのメリット・デメリットについて表裏関係の要素があるということです。
例えば、デメリットの「けがのリスクが高まる」とメリットの「柔軟性が向上する」、デメリットの「肌トラブルの可能性がある」と「美肌効果が期待できる」です。
つまり、安全に実践できればメリットになり得る一方で、安全に実践できなければデメリットにもなり得るということを意味します。
そこで、次に、ホットヨガを安全に行うための注意点について見ていきます。
ホットヨガを安全に行うための注意点

ホットヨガは高温多湿環境で行うため、メリットが多い一方でリスクも存在します。
最後に、安全に楽しむための具体的なポイントを詳しく解説します。
- 水分補給を徹底する
- 無理なポーズは避ける
- 体調を最優先にする
- 適度な休憩とクールダウン
- 自分に合った頻度で続ける
水分補給を徹底する
大量の汗をかくホットヨガでは、脱水症状の予防・水分補給が最も重要です。そのポイントは以下の通りです。
- レッスン前→コップ1杯程度の水分を摂取
- レッスン中→小まめに水を飲む(目安として15~20分に一口)
- レッスン後→失った水分を補う
また、水だけでなくスポーツドリンク等で、ナトリウムやカリウムなどの電解質を補給すると、脱水・めまい・倦怠感のリスクを軽減できます。
無理なポーズは避ける
高温環境で筋肉が柔らかくなるため、「普段より深くポーズを取れる」と錯覚しやすいです。しかし、オーバーストレッチは関節や筋肉の損傷につながります。
- 初心者はインストラクターの指示通りに行う
- 痛みがある場合は無理に伸ばさない
- ポーズよりも呼吸と姿勢を意識する
「呼吸優先」の姿勢を守ることで、安全性が格段に高まります。
体調を最優先にする
ホットヨガは体調の変化に敏感な運動です。
風邪・発熱・倦怠感などの体調不良時や飲酒直後、また、強い月経の症状があるときなどは、ホットヨガを控えるようにしましょう。
体調が悪いときに無理に参加すると、脱水やめまい、体調悪化につながります。
適度な休憩とクールダウン
高温環境で体を動かすと心拍数が上がり、筋肉や関節への負荷も大きくなります。
レッスン中・終了後の休憩やクールダウンを省略すると、めまいや倦怠感を招きやすくなります。
- ポーズとポーズの間に深呼吸を行う
- 終了後はスタジオ内で座って休む
- 水分補給と軽いストレッチで身体を落ち着ける
といったことを意識すると、体調不良のリスクは大幅に減らすことができます。
自分に合った頻度で続ける
ホットヨガは「毎日行えば良い」というものではありません。体力や発汗量に合わせて週1~3回程度を目安に続けることが理想です。
特に、初心者の方は、週1回程度からスタートしていただいて問題ありません。慣れてきたら、週2~3回の実施で調整するのがよいでしょう。
また、休息日を設けることも大切です。
無理な頻度で行うと、疲労や脱水、関節への負担が蓄積します。
最後に
ホットヨガは、通常のヨガにはない大量の発汗や爽快感を得られることから、多くの人に支持されています。
血行促進や柔軟性の向上、リラクゼーションなど、うまく取り入れれば健康や美容のサポートになるでしょう。
しかし、その一方で、高温多湿という特殊な環境は体に強い負担をかけます。
ここで、大切なのは「ホットヨガはあらゆる人にとって良いものではない」という点を理解することです。
自分の体調や生活習慣に合わせて取り入れるかどうかを冷静に判断し、もし挑戦する場合は水分補給・休憩・無理のないポーズを徹底することが不可欠です。
さらに、体調が悪いときや違和感を覚えたときには中断する勇気を持つことも大切です。
ホットヨガは、今、流行っていますが、「流行に流されず、自分の体と相談すること」が重要です。安全に、ホットヨガを楽しみましょう。
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