地域の名前が入った体操名、方言入りのかけ声、観光名所をモチーフにした動き、地元ソングに合わせた振り付け・・・。
ご当地体操は、一見すると、楽しそうで、親しみやすそうで、続けやすそうで、健康づくりにとって理想的なコンテンツのように見えます。
実際に、イベントでは盛り上がり、地元の人も笑顔になり、ニュースやSNSで取り上げられることもあります。
しかし、それにもかかわらず、
- 一時的に話題になるだけ
- 地域住民が継続できない
- 結局ラジオ体操には勝てない
というケースが非常に多いのが現実といえるでしょう。
とやかく言う私(当記事執筆者)も、地域でラジオ体操会を主催していて、ご当地体操も取り入れることがあります。
ご当地体操は面白い体操ではあるのですが、やはり、なかなか、普及が進まないということは、身をもって実感しているところです。
なぜ、ご当地体操は面白いのに広がらないのでしょうか。現場で、ラジオ体操とご当地体操の指導をともに行っている指導者が考えてみました。
それでは、詳しく述べていきます。
そもそもご当地体操とは

健康・体力づくり事業財団によりますと、ご当地体操とは、「自治体主導で考案された体操、または普及している体操」と定義しています。
「その土地らしさ」を体の動きや音楽、かけ声に反映させた、地域密着型の体操である点が大きな特徴です。
ご当地体操は、一般的な体操と同じ、健康づくりという役割に加え、地域への愛着を育てることや、観光・地域PR、住民同士の交流促進など、社会的・文化的な役割も担っています。
健康・体力づくり事業財団が実施した「全国ご当地体操実態調査2018」によりますと、回答のあった自治体のうち、ご当地体操のある都道府県は約8割、ご当地体操のある市市区町村は約4割と、多くの自治体がご当地体操を制定・考案していることがわかります。
一言でまとめると、ご当地体操は「運動プログラム」と「地域文化コンテンツ」が融合した存在であるといえます。
ご当地体操は面白い

ご当地体操の最大の魅力は、何といっても面白さ。
ご当地体操の面白いポイントは、おおむね、次の通りです。
一般的な体操が健康効果や動きの正確さを重視するのに対し、ご当地体操はそこに地域らしさというスパイスが加わります。
体を動かしながら、その土地の文化や風景、人の暮らしを感じられる点が、他の体操にはない楽しさを生み出しているのです。
動きの中に地元の山や海、農作業、特産品などがモチーフとして登場することも多く、まるで体操をしながら地域紹介を受けているような感覚になります。
さらに、方言のかけ声やご当地ソングが使われることで、参加者同士の距離が縮まり、自然と笑顔が生まれます。
実際に、私がラジオ体操会で指導しているご当地体操は、地元の有名スポットやご当地キャラクター名が出てきます。
参加者の方からは、親しみやすい体操で楽しいという声をよく聞きます。
ご当地体操については、「ちょっと楽しいからやってみよう」と思う方もいらっしゃることでしょう。

一方で、ご当地体操の普及・推進に苦戦している自治体関係者は少なくないでしょう。なぜ、普及しないのでしょうか?
ご当地体操はなぜ普及しないのか?

ご当地体操は、自治体が考案したもので、あくまで、当該自治体のみで普及できたら、基本的には、問題ありません。
つまり、そのご当地体操を、他の自治体に普及する必要はなく、普及すべき範囲も狭いです。
それにもかかわらず、ご当地体操の住民への普及が進まないと困っている自治体も少なからずあるかと思います。
ご当地体操の考案・制定においては、運動の振り付けや音楽の制作、専門家の監修などが必要で、それなりの費用を要することになります。
費用は税金で賄われるため、いかに、住民にご当地体操を普及して、健康維持・健康増進につながられるかが、極めて重要となってきます。
ご当地体操で、住民の健康維持・健康増進を目指すには、住民が主体的に体操を継続できるようにするところまでもっていくことも必要です。
そこで、ここでは、ここからは、なぜ、ご当地体操が、思うように普及しないのかについて、体操を指導している当記事執筆者の経験も参考に述べていきます。
その理由は、下記のとおりです。
- 動きが複雑になりがち
- 健康目的より「PR目的」が前面に出やすい
- 継続的な発信が難しい
- 指導者が不足しやすい
- 音楽の中毒性・汎用性が弱い
詳しく述べていきます。
動きが複雑になりがち
ご当地体操は「地域色」や「ストーリー」を表現しようとするあまり、動きが複雑になる傾向があります。
ラジオ体操が全国に広がった理由の一つは、それぞれの運動が簡単で、詳しい説明がいらないことです。
一方、ご当地体操は、
- この動きは◯◯山を表しています
- ここは◯◯祭りの踊りです
といった解説がないとわからない運動がが増えがちです。
すると、初見の人にとってハードルが上がり、継続されにくくなります。
健康体操は「考えずにできる」ことが継続の鍵であり、ここが普及の大きな壁になります。
ご当地体操を制定する際、地域色も盛り込み、かつ、いかに容易な体操に仕上げるのかという視点が必要といえます。
健康目的より「PR目的」が前面に出やすい
前述した点と被るかもしれませんが、ご当地体操は観光PRや地域振興の側面が強い場合があります。
そのため、運動としての合理性よりも、「地域アピール」が優先されることがあります。
その結果として、例えば、運動強度が中途半端、全身運動としてのバランスが弱い、年齢層への配慮が不十分といった問題がでてきて、純粋な健康体操として選ばれにくくなってしまいます。
地域のPRも重要ですが、それ以上に、まずは、健康効果を実証できるくらいの体操を目指して考案・制定することが重要です。
継続的な発信が難しい
ご当地体操は、制作時は大きくPRされることが多いですが、その後の継続発信が弱くなるケースが少なくありません。
新しい体操を普及させるには
- 動画での露出
- 定期的な図解の配布及び印刷
- CDやDVDの作成及び頒布
- 高齢者施設や学校での導入
- テレビやSNSでの定期的な発信
など長期的な取り組みが不可欠です。
※千葉県の「なのはな体操」などが、参考になります。
また、イベントや健康教室など、特別な機会のみにご当地体操を実施するのではなくて、各個人が朝のラジオ体操のように日常習慣に組み込む仕組みを考えることも肝要です。
しかし、自治体の事業は予算や担当者の異動などの影響を受けやすく、数年後には「存在はするが誰もやっていない体操」になってしまうこともあります。
長期的な普及・推進を前提に行わないと、ご当地体操の普及は極めて難しいです。
一方で、そのためには、かなりの費用もかかってきます。ご当地体操を考案・制定する場合は、それなりの覚悟が必要です。

ご当地体操をPRされたいということであれば、ぜひ、弊方にお問い合わせください。無償で当メディアで紹介させていただきます。
指導者が不足しやすい
ラジオ体操には指導者養成の仕組みがありますが、ご当地体操には指導者育成の体制が整っていない場合が多いです。
教える人がいなければ広がりません。
動画があっても、高齢者や子どもが参加する場では、現場で指導できる人の存在が重要になります。
専門家を講師として招くということもできますが、それを行うためには、やはり、費用が必要となってきます。

健康推進委員やスポーツ推進委員が指導者となって、普及していくという方法が、望ましいと思います。
音楽の中毒性・汎用性が弱い
体操の普及には音楽の力が非常に大きく関係します。
一例として、ラジオ体操の音楽は、聞いた瞬間に体が動くレベルで刷り込まれています(名高い作曲者が作曲をしており、気持ちよく体操ができる曲調となっています)。
一方、ご当地体操は
- アレンジされたご当地ソング
- ゆるキャラのテーマ曲
- 自治体歌(市町村歌・都道府県民歌)
などを使うことが多いですが、運動に最適なテンポやリズムよりも地域色が優先される場合があります。
それゆえ、動きにくい、覚えにくい、繰り返し聞きたくならない、といった問題が生じ、習慣化につながりにくくなります。
ご当地体操の取り組み自体はよいこと

ご当地体操が普及しない理由を聞くと、「内容が良くないのでは?」と思われがちですが、それは誤りです。
多くのご当地体操は、地域の特色を活かし、楽しく体を動かせるよう工夫されています。内容も面白いものが非常に多いです。
取り組み自体の価値は決して低くありません。市民の健康づくりのためには、むしろ、素晴らしい取り組みだといってもよいでしょう。
一方で、自治体によるご当地体操の考案・制定には、それなりの、税金が投入されることになります。
そのため、重要なのは、制定したご当地体操を普及させて、住民の健康維持・健康増進に貢献することです。そして、健康寿命を延ばして、社会保障費を減らすことです。
ご当地体操によって、コストパフォーマンスがプラスになることが不可欠です。
地域のPRや郷土愛の醸成も目的としてよいですが、あくまで「体操」でありますから、まずは、健康づくりという視点をもってほしいと思います。
また、ご当地体操の普及・推進のためにも、一定のコストがかかってきます。
つまり、ご当地体操は、「とりあえず作ってみる」では本来成立しない事業です。
本気で普及させるのであれば、継続的な発信、学校や高齢者施設への導入、指導者育成など、長期的な取り組みまで見据えた自治体の覚悟が必要になります。
ここまでは、ラジオ体操+ご当地体操を普及・推進している当記事執筆者の考えを述べてきました。
私の住んでいる地域にもご当地体操はあるのですが、残念ながら、住民にはほとんど普及していません(運動の内容は非常に面白いのですが…)。
一方で、体操自体は存在しているので、使わないのももったいないと感じているところです。
そこで、私が開催しているラジオ体操会では、自治体に音源や資料をご提供いただいたうえで、ご当地体操も取り入れています。
ご当地体操について、私は、どちらかというとネガティブな考えを持っているのは確かですが、健康づくりには有用ですので、今後も、弊方として、ご当地体操の普及・推進に取り組んでいきたいと思っております。
ラジオ体操の普及でもよいのではないか

ご当地体操を新しく作って普及させるよりも、すでに全国的に定着しているラジオ体操を広げるほうが合理的ではないか、という考え方もあります。
実際に、ご当地体操ではなく、(正しい)ラジオ体操の普及を行っている自治体は多数あります。
ラジオ体操は長年にわたり続いてきた実績があり、子どもから高齢者まで対応できる全身運動として完成度が高い体操です。
すでに多くの人が知っているため、新しく覚えてもらう必要がないという点は、普及面で大きな利点です。
一方、ご当地体操は制作費だけでなく、
- 「知ってもらう」
- 「覚えてもらう」
- 「続けてもらう」
という段階ごとにコストと時間がかかります。
ゼロから習慣を作るのは想像以上に難しく、同じ予算を使っても参加者が広がらない可能性があります。
その点、ラジオ体操の実施場所を増やしたり、イベントや高齢者教室で活用したりするほうが、短期間で多くの住民に運動機会を提供できます。
健康施策としての効率を重視するなら、新しいご当地体操をつくるよりも、既存のラジオ体操を活用する方が効果的だと考えられます。
もちろん、ご当地体操には地域PRや交流促進といった別の役割がありますが、純粋な健康づくりという観点では、ラジオ体操の普及の強化の方が成果につながりやすいと考えてよいでしょう。
東日本大震災以降、ラジオ体操のご当地バージョン(方言バージョン)の作成も、実施されています(自治体が主体となって作成しているケースも多いです)。詳細は、下記リンク先をご覧ください。
関連記事「ラジオ体操の方言バージョンが面白い!販売されているCDや方言バージョンの種類も解説!」(内部リンク)
最後に
ご当地体操は面白い内容のものが多く、健康づくりや地域の魅力発信といった点で意義のある取り組みです。
しかし、動きや音楽が汎用的でないこと、継続的な発信や指導体制の確保が難しいことなど、なかなか広まらないということは事実であるといえます。
さらに、制作には自治体の予算が使われる一方で、健康効果や継続実態といった成果が見えにくいという課題もあります。
本格的に根付かせるには長期的な戦略と継続的な取り組みが不可欠であり、単発事業では十分な効果を出しにくいのが現実と言わざるを得ません。
その点、ラジオ体操はすでに広く知られ、誰でもすぐ参加できる完成度の高い体操として社会に定着しています。
健康施策としての効率を重視するなら、新たな体操をゼロから普及させるよりも、既存のラジオ体操の活用を広げるほうが成果につながりやすいという考え方も理にかなっています。
ご当地体操を制定するようであれば、自治体には、一定の覚悟が求められます。

ご当地体操をPRされたいということであれば、ぜひ、弊方にお問い合わせください。無償で当メディアで紹介させていただきます。
