今日は、web担当者・橋口が、2023年になって、最も衝撃を受けた内容についてです。
ふと、パソコンで動画投稿サイト「YouTube」を開いたら、韓国の童謡である「둥근 해가 떴습니다」がおすすめに出てきました。なぜ、韓国の童謡がおすすめに出てきたのかよくわからず、とりあえず、「둥근 해가 떴습니다」を聞いてみました。
すると、( ,,`・ω・´)ンンン?なぜか、聞き覚えのあるメロディーが聞こえてきました。すなわち、それは、過去に放送されていたラジオ体操の楽曲でした。
歌は、もちろん、韓国語です。韓国語で歌われているのに、日本のラジオ体操のメロディーが聞こえているのです。あまりの衝撃に、私、一瞬、頭がおかしくなってしまいました。
ということで、本記事では、「둥근 해가 떴습니다」について深掘りしてまいります。
この記事を見てわかること!!
- 初代ラジオ体操第1(国民保健体操)の楽曲について
- 日本の植民地におけるラジオ体操の実施について
- 「둥근 해가 떴습니다」の歌がつくられた背景について
当記事では、ハングルの記載もいたしますが、実は、私は、韓国語は全くわかりません。翻訳ソフトを利用しながら、本日紹介する童謡などについて調べましたことを、先に報告しておきます。
まずは、聞いてみてください
とりあえず、まずは、「둥근 해가 떴습니다」を聞いてみてください。上の動画は、私のYouTubeでおすすめに出てきた動画です。2023年6月現在、再生回数は175万回。韓国で、人気の童謡であることがわかります。
別バージョン:https://youtu.be/4f--Gaz90f0
上記URLは別バージョンの「둥근 해가 떴습니다」です。こちらは、なんと、234万回再生(2023年6月現在)。とてつもない再生回数です。この再生回数に鑑みて、韓国において「둥근 해가 떴습니다」は広く知られている童謡であることがわかります。
この曲を聞いて、ラジオ体操愛好家の方ならば、ピンと来るかもしれません。後で述べますが、日本のラジオ体操と大いに関係があります。
歌の内容
まず、曲の名前となっている「둥근 해가 떴습니다」を日本語にすると「丸い太陽が昇りました」となります。
歌われている内容は、日が昇り、子どもが起床をしてから、幼稚園に登園するまでに行うべきことです。
歌われている順番通りに述べてまいりますと、以下の通りになります。
- 起床
- 歯磨き
- 洗顔
- 身支度・着替え
- 朝食
- あいさつ(行ってきます)
- 登園
非常にかわいい童謡ですが、子どもに対する啓発の意味も込められていると考えられます。
では、「둥근 해가 떴습니다」(丸い太陽が昇りました)と日本のラジオ体操は、一体、どのような関係があるのでしょうか。
メロディーに注目
注目すべきは、メロディーです。このメロディーを聞いて、ラジオ体操を思い浮かべられた方は、ラジオ体操の愛好家か高齢の方くらいだと思います。
実は、「둥근 해가 떴습니다」は、日本において過去に放送されていたラジオ体操の楽曲に歌詞をつけたものとなっているのです。
現在のラジオ体操は三代目となりますが、「둥근 해가 떴습니다」は初代ラジオ体操第1(国民保健体操)の其の1の楽曲に歌詞がつけられたものとなっております。
※テンポも速くなっております。
初代ラジオ体操第1
正式名称は国民保健体操。1928年(昭和3年)11月から1946年(昭和21年)4月まで放送されていました。現在のラジオ体操と比べると単調な動きとなっておりますが、当時の日本国民には広く受け入れられました。
初代ラジオ体操第1(国民保健体操)には、いくつかの楽曲があるのです。其の1は、福井直秋作曲「可愛い歌手」です。しかしながら、著作権の問題が出てきたため、初代ラジオ体操第1の楽曲として、其の1を使えない時期がほんの短い期間でしたがありました。
そのときは、東京音楽学校作曲の其の2や其の3の楽曲が使われておりました。ただ、結局、著作権の問題はクリアとなり、初代ラジオ体操第1の楽曲は、其の1(「可愛い歌手」)が広く使われました。
「朝日を浴びて」
「둥근 해가 떴습니다」は、初代ラジオ体操第1・其の1(「可愛い歌手」)に歌詞がつけられたものと申しましたが、日本でも同じく歌詞がつけられた曲があります。
それが、「朝日を浴びて」です。武内俊子氏が作詞しております。1939年(昭和14年)に「朝日を浴びて」が発表されております。とりあえず、1番のみですが、歌詞を見ておきましょう。
朝風そよそよ ラジオは響く一二三
大人も子供も 輝く太陽仰いで
今、光と大気に
湧き漲る 血潮よ
銃後の護りだ われ等の身体鍛えん
歌詞を見て、感じることはないでしょうか。注目したいのが、後半です。軍国主義的な内容が盛り込まれております。これは、「朝日を浴びて」の2番・3番・4番も共通です。「朝日を浴びて」を初めて聞いたとき、私は軍歌ではないかと思ってしまったくらいです。
「朝日を浴びて」は「ラヂオ体操の全」というCDで聞くことができます。YouTubeでもアップされていることを確認しましたが、出典が不明であるため、当サイトに埋め込んでおりません。
冒頭、「둥근 해가 떴습니다」を聞いて、衝撃を受けたと申しましたが、その理由の1つが、「朝日を浴びて」とのギャップです。「둥근 해가 떴습니다」は子ども向けのかわいい童謡です。軍国主義的な「朝日を浴びて」と同じ楽曲であるとは、とても思えなかったのです。
なお、「朝日を浴びて」については、別の記事で詳しく述べております。
なぜ「둥근 해가 떴습니다」はラジオ体操?
それでは、なぜ、韓国の童謡「둥근 해가 떴습니다」は、日本の初代ラジオ体操第1(国民保健体操)其の1=「可愛い歌手」=「朝日を浴びて」と同じメロディーなのでしょうか。なぜ、同じ楽曲に歌詞がつけられたのでしょうか。
それを理解するにあたっては、韓国とラジオ体操の関係について述べておく必要があります。
日本の植民地としての韓国
1910年、日本は韓国を併合し、1945年の敗戦まで、朝鮮半島を植民地として支配していました。
ここでは、植民地支配について詳述はしませんが、特に、日本が戦時体制下に入る1930年代後半以降は、植民地支配が強化されました。
日本のラジオ体操も、特に、戦時体制下においては、各植民地で実践されました(日本でラジオ体操の放送が始まった1928年から、植民地に持ち込んでいたとみられるが、特に、戦時中は盛んに行われた)。
当時、ラジオ体操は、健康増進ではなく戦争のための鍛錬が目的でした。さらに、愛国心・皇国精神を養うことも目的とされておりました。
朝鮮でも日本のラジオ体操(初代)が実施されていました。そのため、初代ラジオ体操第1(国民保健体操)・其の1の楽曲は、当時、朝鮮でも広く知られておりました。また、その歌詞付きバージョン「朝日を浴びて」も、知られていたとみられます。
植民地支配終了後
以下、韓国語のサイトを参照に述べております(例えば、こちらのサイト)。当記事執筆者は、韓国語が全くわからないので、翻訳機能を利用して調べました。
そして、1945年8月、日本の敗戦にともない、朝鮮半島の植民地支配は終了します。
「둥근 해가 떴습니다」は、日本の植民地支配が終わった後、まもなく、初代ラジオ体操第1の其の1の楽曲(「可愛い歌手」)に歌詞をつけて、作詞されたとみられます。目的は、やはり、子どもたちへの啓発。
韓国語サイトによりますと、背景として、当時、朝鮮に作曲者の人材が不足していて、とりあえず、広く知られている曲を探したところ、初代ラジオ体操第1の其の1=「可愛い歌手」=「朝日を浴びて」が採用されたようです。
ただし、「둥근 해가 떴습니다」については、作詞者が不詳であるなど、これ以上の詳しい情報はありませんでした。
「둥근 해가 떴습니다」の作詞・作曲者は以下の通りです。
「둥근 해가 떴습니다」
作曲:福井直秋
作詞:作詞者不詳
最後に
いかがでしたか。「둥근 해가 떴습니다」は、現在、韓国において、広く知られた童謡となっております。そうした童謡の原曲が、日本における初代ラジオ体操第1・其の1と同じであるということに対して、驚かれた方も多いのではないでしょうか(私は、ひどく驚きました)。
ただし、「둥근 해가 떴습니다」のテンポは、初代ラジオ体操第1・其の1と比べるとかなり速くなっております。そのため、「둥근 해가 떴습니다」と初代ラジオ体操第1・其の1のメロディーが同じであることを理解いただけない可能性があります。
その場合は、テンポを調整してみてください。きっと、同じ楽曲であることがわかると思います。
なお、2028年にラジオ体操は100周年を迎えます。ラジオ体操100周年を迎えるにあたって、このように、今後ともラジオ体操の歴史について、当サイトで発信してまいります。